Ⅰ.はじめに
福岡市は,九州の北部に位置し,市の人口・世帯数は約147万人,71万世帯であり,周辺市町村を含めた都市圏人口は230万人を超えている。
英国情報誌「monocle」で,世界で最も住みやすい都市トップ25において,平成20年から連続して選ばれる(平成23年は16位)など,住みやすく活力のある都市として一定の評価を得ており,国内でも有数の国際的な都市となっている。
Ⅱ.福岡市における景観施策の取組体系
福岡市では,市民はもとより来街者にとって,魅力と心地よさが感じられる,都市景観の形成を目指し,下記の体系図にあるように、届出制度による良好な景観形成に向けた「誘導制度」、ライトアップや彫刻のあるまちづくりといった「景観事業」、都市景観賞をはじめとした市民の意識啓発といった「意識高揚」という三本柱を基本に、多様な事業に取組んでいる。
Ⅲ.意識高揚事業の取組内容
良好な都市景観形成において,市民の意識啓発は重要な要素であり,都市景観賞を中心に様々な事業を展開している。
1.福岡市都市景観賞(S62 ~ 毎年実施)
都市景観の形成に寄与しているとみとめられる建築物,工作物,その他の物件の所有者,設計者,施工者その他関係者を表彰することにより,都市景観の向上と市民の都市景観に関する意識の高揚を図る。
2.景観賞記念講演会(H7 ~ 毎年実施)
景観賞の表彰式に併せて,建築家や景観の専門家などによる講演会を開催している。
3.景観エッセー(H9 ~ H20 計12回開催)
第11回都市景観賞から「景観エッセー」を同時募集し,心の中の景観を広く市民に紹介してきた。
4.まちなみ写真コンテスト(H21~ 毎年実施)
「景観エッセー」に代わって実施。「写真」という媒体でエッセーとは違う切り口で良好な景観を紹介している。
5.景観フォーラムなど(H3 ~ )
機会を捉えて景観フォーラムや様々なイベントを開催している。
6.景観ガイドツアー(H21 ~ 毎年実施)
市民とともに優良な景観エリアを巡り,まちづくりや景観形成の意義,重要性について共に考えるガイドツアーをNPO法人や地域団体と共同で実施している。
7.都市景観情報誌「彩都」(H7 ~ 毎年発行)
都市景観に関する情報誌「彩都」を,都市景観賞表彰式に併せ年1回発行している。
Ⅳ.都市景観賞25周年記念事業
福岡市都市景観賞は,平成22年度までに24回,計189の作品及び活動が表彰されている。
平成23年度は,都市景観条例制定及び都市景観賞創設から25年を迎える年となることから,今後の取組みについて考える,25周年記念事業を実施した。
1.私の好きな都市景観コンテスト
市民にお気に入りの都市景観賞を選んでいただくことで,受賞作品について,市民目線での評価を実施し,今後の賞のあり方を考える。また,コンテストと併せて,市民インタビューやミニシンポジウムなども実施。
2.景観ガイドツアー
都市景観賞を受賞した作品を中心に,ガイドの解説を交えながら市民とともにまち巡りを実施。
3.都市景観シンポジウム
都市景観賞25周年記念事業の総括として,これまでの受賞者の方に,都市景観に対する想いや受賞時の裏話などを語っていただくシンポジウムを開催。
4.制作物など
「彩都」は25周年記念号として,25周年記念事業の様子や,著名人への巻頭インタビュー,過去の受賞作品のマップなど,これまで以上に多彩な内容で発行。また,受賞作品の写真や詳細な情報などをCDにまとめた「福岡都市景観賞作品集」も制作。
Ⅴ.福岡市都市景観賞25年の取組成果
市民,事業者,行政がそれぞれの役割で都市景観形成に取組んできたことで,均整の取れた美しいまちづくりの輪が福岡の街に広がってきた。(本市を美しいと感じる人の割合 H14:54%→H22:66.9%)
また,中国のアジアハビタットなどが本市の顕彰制度を参考に「アジア都市景観賞」を創設し、
第1回の表彰式を,景観づくりの模範の地として本市で開催していただいた。
そして,昨年開催された第2回アジア都市景観賞では,福岡市都市景観賞について,これまでの25年の取組が評価され「栄誉賞」をいただいた。
Ⅵ.今後に向けて
都市の景観の水準を決定づけるのは市民の意識であり,市民の意識が高いほど都市の魅力ある景観が形成されと考えられる。
今後とも,より一層,市民,企業,地域のまちづくり団体など多様なみなさんとの連携を深めながら,快適で魅力的な都市景観の形成に取組んでいく。
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