天神のひな祭を終えて
「天神のひな祭」は、1)日本の文化を支える職人さんを応援するしくみを考えたい、2)親子3代が集うことができる大人の街づくりをめざしたい、という2つの大きな目標を抱いて出発した1つの契機を提案したイベントです。
「都市ときものを継ぐ会」が中心となって地域に呼びかけ、WeLove天神協議会、福岡市、福岡市教育委員会、西日本新聞社が後援し、大丸福岡天神店、天神地下街、イムズ、装道礼法きもの学院、ひよ子、アクティブハカタ、鹿児島県絹織物工業組合、黒木織物、伊砂文様研究所、資生堂、RKBなどが協力し、大丸福岡天神店、天神地下街、イムズ、岩田屋、新天町、ひよ子、西鉄グランドホテル、千年工房、うめのま、など54店舗の催事参加をいただきました。
大丸には、パサージュ広場とエクセレントルームをご提供いただき、機材面でもご支援をいただきました。ひよ子ギャラリーは、新設工事をこのために間に合わせていただきました。イムズは、セミナー会場についてご協力いただき、警固神社も神事と会場の両面で支えていただきました。地下街や岩田屋、新天町の関係者の皆様にもご尽力をいただきました。
広報は、じゃらん、西日本新聞社、RKB毎日放送、大丸の協力、facebook、直前のチラシ、ポスターを用いました。facebookは閲覧していただいた件数が5000を超え、大きな反響をいただきましたが、見る層が限られるという課題も明らかになりました。15000部のチラシは、ボランティアの会費で賄いました。もう少し早く広報をしてほしかった、という声が聞かれましたが、協力店が決まるのが遅くなり、直前まで店舗や内容の変更に対応しました。広告費のお申し出もいただきましたが、今年は「市民からの提案」という趣旨に沿って直接的な経費はいただきませんでした。皆様のあたたかいご協力に感謝します。
それぞれのイベントの運営は、市民と協力者約200人の100%ボランティアによって運営されました。ひな継ぎ祭は、豪華な、あるいは職人技が光るお雛様を協力出展していただきました。装道礼法きもの学院には、先生方、ボランティアの生徒さん方やアクティブハカタのアイドルの皆さんととともに着付指導やきものショー、パレードなどでイベントを盛り上げていただきました。紙空庵のお茶席は、途切れることがなかったほど盛会でした。ステージでの数々の演奏なども、寒い中を多数の観客を楽しませていただきました。九州大学佐藤優研究室主催の和文化セミナーは5講座ともに満席に近い状態で、日本の文化の奥深さを再認識する充実した内容でした。実習を伴う和塾9講座は、参加者の満足度が高く、和文化セミナーとの時間調整が望まれました。和の小物販売は、魅力的な工芸品等を集めていただきましたが、十分な広報ができなかったことが残念です。鹿児島県絹織物工業組合主催の伝統織物織元展示販売は、初日が雨だったことが残念でしたが、セミナー参加と併せて大島紬や博多織、京都絵型染の魅力に触れることができました。
地域の協力店の内容については、対応に濃淡があり、連絡がうまくいっていない例もありました。必ずしも満足できる状態ではありませんでしたが、初年度に参加いただいたことに大きな意味があると思います。基礎や実績がなかった状態であったにもかかわらず、趣旨に共鳴していただいたことを心より感謝申しあげます。
日本文化を支える職人を応援する、大人のまちづくりをめざす、という壮大な目標を掲げて試みたイベントでした。おおげさな標題の割にはささやかな結果と思われるかもしれませんが、無から有を産み出したことは大きな実績になると考えます。純粋にコンセプトに共感していただき、惜しみなくご尽力を頂いた皆様に重ねて御礼申しあげます。今後は、地域の皆様がこれをどう評価し、つなげていくか、というところにかかってきます。私たちの提案と社会実験が心の中に小さな火種を残していることを切に願います。
天神のひな祭実行委員会 会長
都市ときもの継ぐ会 会長
九州大学芸術工学研究院 教授
佐藤 優