アジア景観デザイン学会会長
坂井 猛


アジア景観デザイン学会は、九州景観材料研究会を母体として2004年に発足しました。
都市、農村等地域の優れた景観形成のためのデザインの研究・開発・改良・発展に寄与することを使命とし以下の7つの目的を掲げています。

(1) 景観に関する研究を振興する。
(2) 景観の発展を目指す方法を提案する。
(3) アジアの景観の魅力を認識し、構造化をはかる。
(4) アジアの感性に適合した景観づくりの方法を示す。
(5) 景観改善にかかわる事業を促進する。
(6) 景観の向上を目指す行政の事業を支援する。
(7) アジアの関係機関及び専門家との交流を行う。

具体的には、以下のような活動を行っています。
・景観デザインに関する研究会の開催
・機関紙・論文集等による研究成果・情報資料の刊行
・講演会・見学会の開催
・内外の景観関連団体その他関係機関との交流
・目的に対して優れた貢献をした団体、個人の表彰
・その他、本会の目的達成に必要な事業

これまでの欧米主体の景観誘導に対して、アジアならではの評価基準や誘導方法があるのではないか、という課題を設定し、様々な取り組みを続けています。日本、中国、韓国等で研究大会を開催してきており、それぞれの国でも景観に関する取り組みが始まり交流も盛んになっています。また、国連ハビタット、中国人居環境協会、福岡アジア都市研究所と協同で2010年に「アジア都市景観賞」を創設し、活動の輪が広がっています。産官学の連携によって、行政や企業が多く参加する実践的でユニークな学会です。

さらに、2013年には景観材料認証品制度とアジア景観デザイン学会賞を創設しました。
景観材料認証品制度は、この学会が窯業系企業の研究会から始まったことから、景観材料の評価基準を検討し計画・選定の目安を示すことにより、景観の質を向上させることを目的とした認証制度です。アジア景観デザイン学会賞は、アジアの景観デザインに関する学術的研究の進歩発展およびアジアの景観デザインの発展を目的とした表彰制度です。地域の景観にふさわしい景観材料や、優れた研究・業績、その優れた研究・業績をなした個人もしくは団体によって、アジアの景観の質を高め、発展することを企図したものです。誰もが目にする公共財としての景観を、より優れたものにするため、アジアを主なフィールドとして精力的に取り組んでいきたいと思います。

2019年11月に確認されたCOVID-19の2年以上に及ぶ流行によって、学会の活動休止を余儀なくされました。今後は、ソーシャルディスタンシングを意識した新たな生活様式や社会が、ライフスタイルと都市のあり方を変えることが予測されることから、アジアの都市景観に及ぼす影響についても注視していきたいと考えています。

2022年3月