1.なぜ屋外広告物の全件調査を行ったのか

福岡市は、面積341平方キロ、人口147万人、世帯数72万世帯となっており、推計では人口は2025年頃まで微増を続けると予測されている。

福岡市は、商業・業務機能など、第3次産業を中心に成り立っている都市であり、そのため大変広物が多い状況にある。

屋外広告物は、日常生活に必要な情報を提供する機能を持つと共に、街の賑わいを感じさせるものであるが、その一方で、屋外広告物の無秩序な氾濫は、街の景観を損ねることになる。

福岡市は、景観に対する取り組みとして景観法及び「福岡市景観計画」に基づく施策の実施にあたって景観誘導の実効性を高めるとともに、良好な景観形成に向けた市民・事業者の関わりの一層の推進を図るため、これまでの福岡市独自の景観誘導施策を法に基づく取り組みや手続きに改めるほか、福岡市都市景観条例の一部を改正し景観法に基づく景観計画の策定に関する手続き規定や景観資源の保全に関する規定等を新たに設けた。

「福岡市景観計画」では、本市の景観を地域特性に応じた良好な状態で保全するためのゾーン区分を設け、目指すべき景観の目標像を示すとともに、従来、自主条例である景観条例を根拠に指定してきた都市景観形成地区について規定した。この景観計画には、屋外広告物に関する景観形成基準が記載されているため、屋外広告物法第6条に基づき、景観計画に即して屋外広告物条例の規制を行うこととしている。

福岡市は、国内外からのお客様が多いことから、これまで、張り紙、はり札など、簡易除却可能な広告物対策に力をいれ、市民と共に違反広告物撲滅に取り組むなど一定の成果をあげているものの、その一方で、広告塔や広告板など、簡易除却の出来ない広告物が多く、都市景観上の課題がある。


これまでも、福岡市に登録している約500社の屋外広告業者に対する啓発や指導を実施してきたが、広告物の数が膨大で、全体の掲出状況の把握が出来ず、対処療法的な指導にならざるを得ない状況があった。また、昭和47年の屋外広告物条例の制定以来、屋外広告物の規格基準の見直しを行っていないため、近年の広告物を取り巻く技術の進歩などに対応しておらず、屋外広告物の規格基準の見直しの必要性が生じている。屋外広告物の規格基準の見直しにあたっては、屋外広告物の掲出実態を把握する必要があるため、平成22・23年度に屋外広告物の実態調査を行った。

(今回の調査手法については、実際に調査を行った国際航業株式会社が解説します。)

 

2.実態調査により得られたもの

 

今回の調査により違法なものや未申請を含む市内の屋外広告物について、掲出の実態を画像データで取得し福岡市の7つの区ごとの広告物の種別や掲出場所の現況を把握できたことから、今後データを分析し、違反指導や屋外広告物の規格基準見直しに活用していくこととしている。調査で収集された情報を元に、実際の広告物の出現傾向を踏まえて、基準の検討、例えば、基準の変更により既存不適格となる物件が、何処にどのように発生するのかをシミュレートし、その結果、広告管理の効果や影響を把握することが可能となる。


建物の壁面の屋外広告物の総量を把握することもできるため、平屋、2階建と3階建て以上の建物での屋外広告物の占有割合の違いや壁面の立体規制を検討するための基礎情報を得ることもできる。


実態調査で得られたデータと許可している屋外広告物のデータをつきあわせたところ、無許可の屋外広告物が多数あることも判明したため、今後、無許可の屋外広告物の是正も行っていくこととしているが、この是正においても実態調査で得られたデータを活用できるよう、現在福岡市で使用している屋外広告物管理システムについて再構築を行うこととしている。

また、調査によって得られたデータは、道路行政を始め、様々な行政分野に利活用が可能な汎用性を有している。

今回の調査は、主として屋外広告物の調査を目的としたものであるが、その結果として、広告物だけでなく、建物など、道路周囲の景観を計測可能な形で分析することで、福岡の街並みを丸ごと記録することが出来た。

このことは、より良い景観を作りあげていく施策を進めていく上で、広告物に関する制度の検証や、景観形成のあり方を検討するための資料として、福岡市にとって大変貴重な財産となっている。

 

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